魚市場

 「行ってみなっせ」。
 アタシの散歩で出逢うクマ姐さんの飼い主で、元漁師、今は魚屋のオヤジさんが言ったんだ。以前、親父さんが、「銚子市民になったんだから、一度は魚市場の競りを見ておきたい」。そう話していたんだよ。
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 今朝、出逢ったら、態々市場に電話を掛けて、水揚げの様子を聞いてくれたんだね。「今朝はよ〜、ビンチョウが三隻入って来ると」。
 八時には競りも終ってしまうと言うんで、アタシの散歩もそこそこに、親父さん、魚市場へ行っちゃったんだ。まるで魚屋みたいに、ゴム長履いて毛糸の帽子に雨ガッパの上着。首にタオルを巻いた格好でね。
2632   三十分程で戻ってきたから聞いたんだ。どうだった。
 「丁度、船から市場に荷下ろし中だったよ。マグロが床にゴロゴロしてた。
もっと熱気があるかと期待して行ったんだけれど、意外とクールで無駄口のない雰囲気だね。めいめい、見積もった金額を書き込んだ紙切れを、壁際に置いた投票箱に入れるんだね。適当な処で係の人が改札して、落札者の番号と金額が発表されるんだ。それを皆、淡々と見守っているよ。だから、大きな掛け声もないよ。とにかく寒さだけをヒシヒシ感じたよ。手が氷に入れた様に固まってしまったんだ」。
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  今朝は、あたしんちでマイナス三度。市場に行った頃は、もう日差しがあったから、気温は上がっているはずでしょ。
 「そんな感じは全くしなかったよ。むしろ、グット冷え込んで冷凍庫にでも入っている感じさ。そんな所為もあるんだろうね。市場にいた人達は皆、声も出さず黙々と品定めしていたよ」。
2648  ビンチョウマグロは、ビンナガと呼ばれて、生でも食べるし、ツナ缶にもなるんだってね。今日の入荷は千数百本程水揚げされたんだって。
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混血

  朝方はそれほどでもなかったけれど、午後、風が強くなってからは寒かったね。
ケンニャン達は千葉へ出掛けたんだ。アタシは親父さんと、日曜日の午後の散歩に出掛けたよ。日曜日は、普段の芝生広場や空き地じゃなくて、住宅地を二、三キロ歩くんだ。
04  正直言って、まだ馴れていないんだ。特にクルマが傍まで寄ってくるし、地面も固いしね。結構ストレスなんで、その所為か路上で柔らかいウンチをしてしまうんだ。
 今日も二度程。その度に親父さん、ビニール袋に入れてぶら下げて歩くんだ。

 住宅地と言っても、昔からこの街に住んでいる人達の敷地は広いね。「三百坪はあるかもしれない」。そう親父さんが言ってたよ。どの家も人気がなくて、申し合わせたようにイヌマキの仕立てた植木が、”どうだ、立派だろ”と言わんばかりに並べられているんだ。多分、年寄り夫婦が住んでいるだけだろうね。そんな敷地に並んで狭い土地、と言っても五十坪はあるだろうけれど。そこには今風の家で、恐らくは若夫婦の家族が住んでいるような気配がするよ。
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 最初に出逢ったのは、何時も利根川縁で見掛けるアオサギ夫婦でね、何故か、住宅地に囲まれた、収穫が終って苗を植えている最中のキャベツ畑で、争っていたんだ。夫婦喧嘩でもしていたんだろうか。
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  次に出逢ったのは、アタシと同じ犬種のコーギー。牡で五歳だって。恥ずかしがり屋なのか、アタシが近寄って行くと、後ずさりするんだよ。
 きっと、アタシが美人過ぎるのかな。そう思っていたら、相手の飼い主が言うんだ。「でっかいねえ。胴の長さなんか、ウチの一倍半はあるよ。本当にコーギー?」。
「よく見ると、顔つきも少し違うね。コーギーは、ハスキーと掛け合わせることもあるから、その血も混じっているかも」。
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 アタシがコーギーじゃないって言いたいの。
アタシは傷ついたよ。ただでさえ大女になると獣医に予言されていたんだから。長胴短足は、アタシ達コーギーの特徴じゃないか。へっ!寸詰まりのマザコンめ。

 怒りが収まらないまま、マユチャンの婆ちゃんちにたどり着いたんだ。そしたら玄関に、野良から今は飼い猫に昇格したハナが居て、アタシをとおせんぼ。
 
07  いいよ、入らないから。きびすを返して帰り道、頭の上をトビだかノスリだかが威嚇してきたんだ。放っといてよ〜。芝生広場が見えたから、力一杯親父さんを引っ張って戻ったんだ。
 

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ハザードマップ

  今朝も気温は一度。馴れたのか、其れ程寒くは感じなかったんだ。けれど朝日が昇ったら西風も吹き出して、思わずブルッときたね。やっぱり寒いや。
 それでも夕方の散歩の時には穏やかな日和に感じたんだから、寒さは気持ち次第かなあ。
Google   * 画像  Google Earth  より

 昨日、親父さんが年金機構の事務所で、壁に貼られた一枚の図面に注目したんだって。”所内持ち出し禁止”なんて書いてあったそうだけれど、”ハザードマップ”というんだそうだよ。危険度予測図、あるいは被害度予測図とでもいうのかな。

 利根川が異常降雨や、何かの原因で出水、氾濫した場合、その地域がどのような状態になるかを予測して、作図されたものなんだって。
 今まで、このような図書類は公表公開されることは殆どなくて、役所の極一部の関係者のみ知る存在が多かったそうなんだって。 事実、親父さんが現役時代、役所にいながら、このようなハザードマップを見た事がなかったそうだよ。決して無関係な部所にいた訳じゃないのにね。
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 ところが震災以来、「ハザードマップという図書について、広く知られる存在になったんだ。それでも、”態々配るようなものじゃない”。そういう認識は、役所の中では今もって健在なようだね」、と親父さん。

 偶々目にしたハザードマップによれば、利根川と常陸利根川が合流する辺りじゃあ、氾濫した水の水深が最も深くなる場合で五メートルというから、二階建ての住宅じゃあ、屋根だけが水面に出る格好なんだね。
 
 それを見て、親父さんはドッキリしたんだって。何故なら、その下流に位置する銚子はどうなるんだってね。それでも少し深呼吸して考えてみたんだって。
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 合流部に利根川大堰があって、潮水の俎上を食い止めている話は以前から知っていたんだ。つまり、河口から合流部までの水位差が余りない。
 あたしんちは海抜三メートル程度。ではこの辺りは?。
 
 先日取り替えた新しいスマートフォンのアプリを起動して海抜を調べたら、マイナス値なんだって。
 ということは、年金機構の事務所のある地域は、海面より低いゼロメートル地帯なんだね。”川上に行けば行く程海抜が上がる”。そんな先入観があるから、水郷と呼ばれるこの地域が、周囲より凹んでいるとは想像していなかったそうなんだよ。
この地域に住む人達には既知の事なんだろうね、きっと。
 とにかくハザードマップによれば、最も低い地域は水田地帯だから、人家は少ない。
 
 それでヤレヤレと言って良いのか悪いのか。
親父さん、週明けにでも銚子の市役所へ出向いて、ハザードマップを探してみる積もりだってさ。有っても見せてくれるかどうか。
 銚子市の情報公開に対する姿勢は如何?。 

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申請手続き

  朝の気温はマイナス三度。昨日が今年一番なら、更新しちゃった訳だね。
 ケンニャンのお出かけ時に、クルマの窓が凍り付いていたんだ。お湯をかけたら、道路に滴り落ちる前に再び車体に凍り付いてしまったよ。 北国の人達なら、この程度なら話題にもしないだろうね。
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  今日は一日、アタシは独り留守を守っていたんだよ。親父さんと母さんの二人、利根川の上流へ20Km程行った香取市まで用足しに出掛けたからね。

 母さん、先日満六十歳を過ぎたんで、年金の受給手続きをするために、最寄りの年金機構の事務所へ出向いたんだ。 千葉市に住んでいた時は、市内に殆どの公的機関の事務所や出張所があることを知っていたんで、これ程面倒とは思っていなかったそうなんだ。
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県庁所在の街の便利さに馴れ切っていたんだね。ところが、銚子市内には其の手の出先事務所がないんだね。だから”最寄りの事務所は何処ですか?”。
 結果、はるばるクルマで一時間さ。

  事務所に着いて、待ち合い室で順番を待ちながら母さん、思ったそうだよ。「年寄りばかりが目立つ銚子で、満六十歳になる人は決して一握りの人達じゃあないはずだけれど、その人達が皆、遠路はるばる此所まで来なけりゃならないって、大変よ。市役所で手続きできないのかしらね」。

 親父さん、その時思い出したんだって。
 昭和四十年代の頃は、市役所に国民年金をあつかう部所があったような。確か、国からの委任事務とか言っていたんだ。何時の頃か、それが国の直轄事務に戻されて、市役所の手を離れたんだ。色々面倒な課題が露呈してのことだけれど、年金手続きをする当事者の身になってみれば、確かに不便極まりないよね。これで、書類の書き方なんかで出直して来い、なんて追い返された日には、怒る人も出てくるかもしれない。

 待っている間に、係官と他の人の会話が耳に入ってきたんだって。係官の口調は丁寧なんだけれど、相談している市民のストレス度が上がってくる様子が、その口調から感じられて、人ごとながらハラハラドキドキしたそうだよ。

 母さんの場合、専業主婦だから申請は自分でしなければならなくて、こうやって出向いたそうなんだ。結局、申請書類は無事に受理されたそうだよ。
 
 「貴方は、これで手続きが完了したので、もう何もする必要はありません。後は満六十五歳になった時、コチラから書類を送ります。それを待って、必要事項を記入して送り返してくれれば、数ヶ月以内には年金が支払われるでしょう」。
「ありがとうございます。宜しくお願いします」。そう挨拶して席を立ったそうだよ。

 五年間待つの?。「そうみたいね」。
 その時は幾らくらい支給されるの?。 「パートタイムで働いていた頃と同じくらいじゃないの」。 確実?。期待?。 「其の時にならないと分らない様子よ」。
 

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今年一番

2606   玄関の前の宅地が霜柱で盛り上がり、砂地が凍って、コンクリートのように固くなって、冷たい風に晒されたロープが棒になった。気温はマイナス一度。
 
 ”今年一番の寒さ”。ニュースがそう言っているよ。
「今年一番の寒さとか言っても、まだ一月も経っちゃいねえべ。まだまだこれからよ」。
 アタシの散歩で出合うクマ姐さんの飼い主で、元漁師、今は魚屋のオヤジさんが一言。
 ”漁船に乗った寒さは、こんなもんじゃねえ”。
 そう言いたいらしいんだ。
 
 続けて、「政府の奴ら、消費税だ税金だと、ナニを考えてやがるんだ。だいたい。。。。」。

 またまた、話が過激になってきたよ。

  何だかよくわからないけれど、浜(市場)から戻ってきた処らしいんだ。
「浜へ出入りするのに5%。競りに参加するのに5%。代理人に5%。消費税に5%。それだけで合計20%も競り値に載せて、店の経費も掛けりゃ、イワシ一匹幾らになると思う?」。 「売れる訳、なかっぺ!」。
 だいぶ怒っているね、今朝は。
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    風が強くて、冷たくて、そんな中でもシラス漁の漁船が出ていたよ。
  振り返ると、顔に飛沫が飛んで来て、痛いよ。
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  「この沖(銚子沖)によ、今、四百隻ちかい船がでて、メバチを追ってるんだわ。けれど風が吹くから漁になんなくて、だんだん、小笠原辺りに下りてるんよ。
小笠原で獲れたメバチは、脂が抜けて、加工用にしか使えないんだわ」。
 じゃあ、生で食べないの?。
 「喰うんだけどよ、ネギトロ知ってべ。あれよ。殆どは缶詰にするんさ」。
 アタシは缶詰の方が好きだけれどね。

 市役所に用足しに出掛けていた母さんが戻って「また、減っちゃったわよ」。
何の事かと言えば、銚子市の人口なんだって。
 「税金とか健康保険料とか、本当に高くて。。。。」。
負担する人口が減れば、住み続けている人の負担が増える計算になるんだものね。
 
 そう言えば、アタシがこの頃散歩する”猫道”沿いの住宅には、無人の家が多いよね。それに川向こうの茨城県に転出する人が増えてるんだって。

 「世代の引き継ぎがうまくゆかないんだろ」。ケンニャンの意見さ。
なんとも寒い話だねえ。

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スイセン

  凄い音に仰天して飛び起きたよ。ナニがおこったのか分らない。そしたらピカッ!。周りが真昼のように光ったかと思うと、直にドカン!、ゴロゴロゴロ。
2608_2  怖かったよ。でも朝になったら、芝生広場は何時もの様に元気な人達が、グランドゴルフを始めたんだ。

 昨日の朝、クルマで出勤したケンニャンは、雪による渋滞で、結局三時間半かかって職場に着いたそうなんだ。普段、高速道路を一部利用して一時間半程の距離だからね。結果的に、鉄道の復旧を待っていたほうが得策だったそうだよ。
 御陰で生徒達は、二単限ほど自習になった筈だし、帰宅したのも深夜じゃあ、そう言う事だよね。 
 
 2610 今朝も親父さん、ニホンスイセンの移植作業をやっていたよ。もう結構な量を移植した筈だよ。あたしんちの庭にも、百株程度は入った筈だし。
 移植を始めてから分ったことだけれど、御近所にはアチラコチラにニホンスイセンが顔をだしているんだ。家人が植えたのもあるだろうし、野生化して道路や路地の塀際に広がっていたり。 見慣れた植物なんだね。
 だから、親父さんがセッセと移植している姿を見て、”何でスイセンなんか、そこら中にゴロゴロしているのに、移植するんだろう”と言うのが、御近所さん達の率直な感想らしいんだ。
2633  草むらに埋もれて勿体ないし、皆が使う広場に少しは花があったほうがいいでしょ。そう言えば、ふ〜ん。分つたような、分らないような応えが帰ってきて、 「黄色のやつがいいね」だとさ。つまり、見慣れたスイセンじゃあ、ありがた味もないという訳さ。

 親父さんがスイセンに熱をいれるには訳があってね。去年、働いていた公園は、三月になると園内の一画がスイセンワールドになるんだ。

2011_042  園内には百数十種のコレクションがあって、植え付けられた規模もかなりあるんだ。けれど親父さん、何だか畑を見せているようで、公園なら、もうちょっとガーデニングセンスを加えたらいいのに。そう感じていたらしいよ。

 
  とは言っても、公園の管理を担う以前は、スイセンについて然程知識を持ち合わせていた訳じゃなかったそうだよ。責任を負う立場になってから、付け焼き刃だけれど勉強して、著名な園芸家の助力も得て、其れ也の提案企画を纏めていたそうなんだ。
 生憎、それを公表する前に退職しちゃったから、気持ち、不完全燃焼なんだね。

 芝生広場でその思いを晴らそうと言う訳じゃないけれど、この街に住むことになったんだから、一汗流そう、くらいの気持ちなんだって。
 取り敢えず、草むらに埋もれたニホンスイセンが、その気にさせたようなんだ。


 

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肩振り

  「JRの様子をネットで調べてよ」。
ケンニャンが顔を洗いながら親父さんに声を掛けたんだ。
「成東から千葉の間で運転見合わせだとさ。パンタグラフの不調だとか」。
2629  昨夜来の雨も風も止んで、青空が広がっているのに鉄道が動いていないんだって。これは困ったね。
 「じゃあしょうがないね。クルマで行くよ」。ケンニャンは、あんまりしょうがないと言う顔付きでもなく、ハンドルを握って出勤して行ったよ。

 「坂を登ったら雪が積もっているよ」。 出掛けて程なくケンニャンから電話があったんだ。銚子から千葉市に行く場合、どうしても北総の丘陵地帯を横切ることになるんだ。丘陵地帯と言っても、銚子市内じゃあ、海抜十数メートル。千葉市内の土気辺りが百メートル前後。然程高いわけじゃないよね。それでも坂はあるんだよ。

 あたしんちは利根川辺リで、その所為で強い風が頻繁に吹くんだ。けれど、雪が降る事は滅多にないそうだよ。昨夜も、雨だった。

 丘陵地はもっぱら農業地域。アタシんちの周辺は漁業や水産加工で生計を立てている人が多いんだ。その所為か、職業も違えば気性も違うらしくて、
芝生広場で毎日お喋りに集る親爺さん達の話じゃ、峠の上は別世界。そんな調子だね。それにしても、丘陵地域に雪が降ったという最近の記憶がないそうだよ。

 だから驚いていたんだ。雪を見て?。いいや。雪を載せたクルマにさ。
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  「千葉市内でも時々降るから、驚くような光景じゃないよ」、と親父さん。
けれど、広場で焚き火に手をかざしている親爺さん達は、そのニュースに驚いた。
 と言うより、驚いて見せたんだね。話を盛り上げるための”漁師の肩振りさ”。

  漁師の肩振りてのは、まあ、逃がした魚を実際より大きく言っても、ことの真偽を突く様な野暮はせずに、笑い話のネタぐらいに受け止めるってことらしいね。
 「船乗りの肩振りてのを、以前、帆掛け船仲間の話で聞いた事があってね、ちょっと使ってみたんだよ。意味としては同じ様な事。物事を大袈裟に語ることだろうか」と、親父さん。

 とにかく毎日昼前には集って、何やら同じ様な話題を繰り返して、昼過ぎには解散するんだ。親爺さん達に、家の親父さんの存在は意識されていて、時々声が掛かるんだよ。最近は、ニホンスイセンの移植作業で、皆のお喋りの前を横切ったりしていたからね。

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   勿論,アタシの事も皆知っていて、「元気だのう」って声を掛けてくれるんだよ。親父さんが、その話の輪に入ることは?。まだだね。
 話題がコア過ぎて、向こう三軒両隣の事情を知らないままの発言は危険。そう親父さんは思っているんだ。
 だから、「もっぱら銚子のアレコレを知る情報源にしているんだ」。だとさ。
 と言う事なら、親父さんの話も割り引いて聞かなけりゃ。だって、肩振りで盛り上がっての情報でしょ。

 とにかく親爺さん達、今朝は雪の話題で肩を振り合っていたよ。

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レジ袋

  久しぶりに朝日が顔をだしたよ。
空の殆どは厚い雲に覆われていたから、
ほんの束の間だったんだ。
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  暫く部屋に籠っていて、身体を動かしていなかったんで、それでも一時間程、外でフリスビーを追って走り回ったんだ。身体を動かすと、ウンコがしたくなるんだよね。
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 一緒に居る親父さんのポケットには、ビニール袋が入っていて、親父さん、それにアタシのウンコを入れておいて、ゴミの回収時に出すんだ。芝生広場にウンコを放置しないためにね。
 ところが最近、ビニール袋が二枚、三枚と必要になってね。アタシが何度も出すからじゃないよ。放浪犬同然の権太が、デッカイのを置いて行くんだ。
 それに、セントバーナード犬のクマ姉さんも、人間並みのを置いて行くよね。しょうがないさ。其の後始末もしないとね。広場を使うグランドゴルファーの爺ちゃん、婆ちゃん達の目が、犬の散歩に厳しくなるからね。
 
 其のビニール袋なんだけれど、買い物のレジで商品を入れてくれるアレさ。
親父さん達が千葉市に住んでいた頃、とにかく溜まったそうだよ。一月もせずにレジ袋や包装紙だけで、ゴミ袋一つが一杯に成る程だと言うからね。とにかく使い道なかったからだそうだよ。

 今は、アタシの外出時に必ず持って出るので、近所のスーパーへ買い物に行った時など、レジでくれるビニール袋を、結構、意識して取って置くんだ。

4813206211_5b3a54e3b1_m_2  銚子市内のスーパーは、黙っていてもレジでくれる。ところがね、川向こうの神栖市内にあるスーパーは、それも同じチェーン店でだよ。レジで必ず聞かれるんだ。「いりますか?」ってね。「ください」って言うと、二円程加算されるんだ。
 
 親父さんが単身赴任していた頃、水戸辺りのスーパーやデパートで食品を買うと、「入れ物、持ってますか?」。そう聞かれたそうなんだ。意味としては同じなんだね。おそらく、茨城県内じゃあ、レジ袋は有料にして減量しよう、って事なんだね。
 おかげで母さん、最近は銚子市内での買い物でも、手提げ袋を持って行くんだ。行くんだけれど、レジ袋はいただくんだ。アタシのためにね。川向こうでの買い物では、「いりません」。そう断っているけれどね。
 
 何となくのダブルスタンダードだけれど、千葉市ころ程、大量にビニール袋が溜まることはないんだ。

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暖房器

 週明けには強い寒気団が押し寄せてくるんだってね。
ここ数日、天気が悪くて部屋に籠っているんだ。今朝、外に出たんだけれど、水溜まりに足を踏み入れて歩き回った所為で、びしょ濡れになって戻ったよ。     
 親父さんに暖かいシャワーを浴びせてもらって、御陰で一心地ついたんだ。
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 部屋の中とは言え、あたしんちは寒いんだ。

  親父さんや母さんのこれから、つまりもっと歳を取った時の不安を考え、あたしんちは、炎を使わない事を方針として、ケンニャン憲法に告示したんだ。

 それで、今流行のオール電化住宅化を選んだ訳だけれど、震災以来、電気の絶対優位が少しぐらついたそうだよ。
 でも、家が完成した後での出来事だから、良くも悪くも火を使うようには出来ていないんだ。


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  そんな事情があるんだけれど、ともかくアタシが何時も自由に動き回れるのはリビング&ダイニングで、その部屋のために、去年の暮れにケンニャンがオイルヒーターを買ってきたんだ。それが部屋を暖める唯一の暖房器具でね。

 先日、オイルヒーターが注目されて例年の150%以上の売れ行きだ。そんな記事をインターネットでケンニャンが見付けて、「そうだろ〜」。自画自賛したんだ。

12_859   とにかくこのオイルヒーター、音はしない。排気ガスも出ない。
それは良いね。

 それなのに「うそ〜」。声をあげたのはマユチャン。

 この二人には暖房に対する期待が異なるんだ。マユチャンは、婆ちゃんとの暮しが長かったから、暖かさを直に感じるコタツを愛好していたんだ。
 一方、
ケンニャンは部屋を暖かくするエアコン派なんだ。そんな二人がオイルヒーターを選んだ。どこで手を打ったのか、謎だねえ。
 
 オイルヒーターを使ってみた実感は?。
 スイッチを入れて一時間経っても、効いているのか、いないのか?。部屋が冷たくはない。手をかざしても、ほんのりと暖かいだけ。その程度だから、暖炉やストーブのような存在感がないんだよ。それに節電向きとは言えないそうだよ。

 
 だからマユチャンには、売れているのが不思議なんだよねって。

 あたしんちの場合は、多分、単純に部屋の容積に対して能力が不足なだけ。
寒さの厳しい北欧で普及しているようだから、使い方次第なんだろうね。

 親父さん、とにかく今年の冬は、着るべきものを着て過ごせばいいんだって。
そうは言いながらも、アタシとの散歩で外を歩いた格好のままで座っているんだから、やせ我慢してるんだよ、きっと
 さてさて。週明けからの寒波をどう凌ぐか、ここは知恵の出し処だね。




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時化

  雨が小やみになった時を見計らって、散歩に出たんだよ。
相変わらず、冷たくて刺すような北東風が吹き付けて、川の波飛沫で雨が降っているようさ。おそらく、鹿島灘からの潮風も相当なものだろうね。
 天気が回復して日が照る前に、庭の植物を洗浄しなけりゃならないよ。

 雨空の隙を狙って散歩に出たのは、アタシだけじゃないんだ。何時もの顔馴染みも姿を見せたよ。
 「今日はよ、時化で浜は休みさ。漁に出られねからさ」。
 クマ姉さんの飼い主で、元漁師、今は魚屋のオヤジさんが、親父さんに話し掛けてきたんだ。
 「確かに、利根川がこれだけ激しく波立っている様子を見れば、銚子沖の波も相当に高いだろうとは、私も推測できますけれどね」と、親父さん。
 昨日も出漁できなかったって。
 「この天気で出てるのは大型のマグロ漁船ぐらいだろ。巻き網船なんかは出せねえよ。観光客が銚子タワーから前の海を見べ。そこで昔、遭難して44人も死んでるなんて想像もしねえべ。けど、あそこの怖さは、地元の漁師は皆、知ってるんさ」。元漁師のオヤジさん。話に熱を帯びて、寒さは感じない風情さ。
 「利根川の押し出しと、沖からの波が河口でぶつかって、不規則な三角波が立つんさ。そこに強い風が吹き付けるから、荷物満載で重くなっていればまだしも、空船状態だと軽いから、横波を受けりゃ,ひとたまりもなく横倒しさ」。
 うちの親父さん、ブルッと震えたよ。話を聞いて怖くなったのか、それとも風に吹き晒されての立ち話の所為なのか。
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 元漁師で魚屋のオヤジさんの話は未だ続いてね。
 銚子タワーという施設は、ウォッセの一部なんだけれど、そのウォッセは観光客相手の物販施設なんだ。つまり、銚子に観光に訪れる客相手に、地元の水産物やお土産を売っているんだ。
 「結構繁盛しているように見えるけれど」と、親父さん。「とんでもねえよ。観光客相手の魚屋って、見た処、いつも客がたむろしてるべ。でも近頃は買わねえんさ」。

 こう言うことらしいんだ。
お土産を持ち帰る理由が薄れた所為だというんだ。銚子の様に、隣近所との濃い付き合いが残っていると、チョイと留守にしただけで「どうした?」。だから、観光に出掛けた時は、近所への土産は欠かせない。皆、どっさり買込むんだって。
 
 ところが都会に住む核家族には、それほど隣近所との付き合いも、家族の人数もいないから、土産も僅かしか必要ないそうなんだ。せいぜい、思い出の記念品ぐらいで、まして魚の捌きもできない。野菜も嫌いとなれば、買って帰る人は僅かなんだって。
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   「つまり銚子市は、観光に過剰に期待して投資しちゃったんだ」。「そうよ!。議員の奴らが。。。。」。
 そこから先は政治の話に。その間、アタシはクマ姉さんの周りをウロウロ。

 親父さんが寒くて震えながら話相手を務めているんで、アタシが助けてやることにしたんだ。どうしたって?。簡単さ。トコトコ、車道へ向かったんだ。
 それに気付いた親父さん、「御免なさい,犬が。。」。クマ姉さんの飼い主の、元漁師のオヤジさんにそう一言掛けて、小走りでアタシを追ってきた訳よ。

 「そうなんだ。役所の需要予測は、都合の良いデーターだけ並べる癖があるから、結果的に何時も大甘。大外れなんだ」、と親父さんがポツリ。

 

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市民と森

  一晩中、家の周りはゴーゴーと風が唸りをあげていたよ。雨も降っているし、芝生広場も、利根川の波飛沫が酷そうで、親父さんが少しの間、外へ出ていたけれど、凍えた顔つきで戻ってきたんだ。だからさしものアタシも、玄関から外に出る気にはならないよ。
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 今日も、親父さんが見付けたインターネット記事の話題だよ。
 * 写真、記事はAsahi com からのコピペね。K_img_render

松戸「関さんの森」シンボル

 ゆっくり、ゆっくり。樹齢約200年のケンポナシは、溝の中をロープにひかれて移動した。16メートルを3時間45分。予定地点にたどり着くと、見守る市民から拍手がおきた。貴重な自然を残す、松戸市幸谷の「関さんの森」を守ろうとした市民運動のシンボル。計画の道路は迂回(う・かい)されることになったが、老木は移さざるをえず、15日、伝統工法の「立曳(たて・び)き」で移植された。
 
  親父さんが言うに、ケンポナシを身近に見た事はないけれど、記事の写真を見て、久しぶりに伝統的な植木屋の移植技法を思い出したって。二年も掛けて準備した移植だから、先ずは大丈夫と確信するそうだよ。

 この記事の舞台とされている”関さんの森”は、親父さんもその経緯に注目していたそうなんだ。だから、記事に目が行った次第だって。
 
 市の計画した都市計画道路が、関さんちの敷地を通過する、そういう線引きが行われたことから、関さんが異議を唱えて今日に至るんだけれど、かなりな年月と、関係者の交渉の積み重ねを経て、今は、その異議申し立ての理由とされている屋敷林、つまり、関さんちの裏庭ね。それはNPO法人に寄付されて、保全されることになり、道路のコースも修正されたと聞いたんだって。
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 親父さん。それで一件落着したと思っていたそうなんだ。でも、家自体は結局、取り壊される事になったんだろうね。けれどケンポナシだけは伐採させないと、関さん、私費での移植を決めた。それがこの記事の根っこにある事実なんだろうね。

 親父さん、気になってインターネットで検索したら、関さんの森の保全運動に対して、今でも賛否色々飛び交っているんだって。
 
 とくにネガティブな意見で気になった理由には、”地主のエゴだ”とか、余所者が口を出して”煽動して”とかいう意見の表記もあるんだ。
 親父さん、現役時代に似た様な事例に幾つも立ち会った経験から、こう思ったそうだよ。

 今、都市化著しい地域である程度纏まった面積の森が残っているとすれば、殆どが社寺の鎮守の森や、その地域の資産家の屋敷林ぐらいなもの。あとは、急傾斜地で利用が困難な場所ぐらいなんだそうだよ。
 そのような森を地域社会が維持する数少ない手法が、保存指定などの法的な”縛り”なんだとか。対して資産家の多くは、利用価値のある土地は既に手放して、今は家屋敷周りを残すのみ。だから、それだけは死守したい。そう言う嘆きも耳にしたそうだよ。

   結果的に、社寺を除けば、資産家が自治体や公益団体による保全を前提に、資産を寄付する事例が結構あるし、ナショナルトラスト活動が盛んなヨーロッパの環境保全も、同じ様な経緯を辿ってきたそうなんだって。 
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 とにかく、その森の所有者である資産家と、地域の人々との間に有る微妙な緊張関係が、このような事例では、感情論的な主張に力を与えがちなんだって。
 それに当事者ならぬ一般的な市民感覚は、”使えてなんぼ”という価値の置き方が支配的なんで、騒ぎになる前は殆ど意識もされなかった森などには、どうしても、道路や公園など、”使える場所”にしようとする傾向が顕著なんだ。
 
 自治体が保存の立場に立っていれば幸いだったんだけれど、生憎、開発側だった。だから、ローカルな緑の保存運動なのに、地域外の市民が馳せ参じざる負えないのが、関さんの森の現実なんだってさ。

 親父さん、現役時代から今のNPO活動でも。市街地に残された”緑の森”について、決まり文句の”貴重な自然”というキーワードでなく、”有益な自然”というキーワードで、地域市民が皆で語り合えるよう、そんな方向に向けて働き掛け続けているつもりなんだ。そう強調しているよ。

 
 










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還暦

  今朝の空は、刷毛で引いた様な雲に覆われていたよ。それでも日差しがあったから、寒くても凍えるような感じはなかったんだ。
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 で、油断していたんだね。突然,川向こうの風車が回り出して、直に、アタシが蹌踉ける程の強い風が吹いて来たんだ。せっかく母さんが干した洗濯物が吹き飛んじゃったよ。

 その母さん、今日が誕生日なんだって。還暦過ぎたそうだよ。アタシがようやく一才になったばかりだと言うのにね。六十歳なんて、アタシ達犬族には一寸想像出来ないよ。
 
 母さん、盛んに「人生に一区切りついた」。そう強調しているんだ。きっと、この六十年の間に、人には言えない苦労をしてきた。そういう念いがあっての言葉だろうね。それでも明日が来れば、今までと同じように家族の面倒見に追われて、自分の時間も無いって愚痴るんだろうね、きっと。
 そうだろうけれど、アタシは母さんを頼りにしているんだよ。ご苦労さまだけれど、これからもよろしくね。親父さん達、家族皆も同じ気持ちだと思うよ。
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 アタシにはプレゼントする物が何もないけれど、アタシが傍にいることで、母さんの癒しになれば、それでアタシも幸せな気分になれるんだよ。
  
 

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