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2012年7月20日 (金)

老木

  朝から曇り空。涼しい風が利根川の向こうから吹いて来るよ。
アタシは毎朝の運動でフリスビーを追っかけるのが好きでね。芝生広場を縦横無尽に走り回っているんだ。御陰で御近所のコーギー犬仲間のようなデブじゃあないよ。アスリート体型を保っているんだ。
 そのフリスビーだけれど、毎日の酷使に耐え切れず、割れてしまったんだ。親父さんが代わりのフリスビーを買って来てくれたんだが、如何にも安物然としていたんで、ガリッと噛んだら面白い様に砕けてしまったんだ。「しょうがないなあ」。そう言いながら渋々、今度はドック協会公認とか言う、フリスビーにしては法外な値段の新品を再度、買ってくれたんだ。
 嬉しくてね。それでも今度は丈夫な筈と、試しに噛んだら歯形がくっきりと。即、親父さんに取り上げられてしまったんだ。つまんないね〜。
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 ところで、アタシんちの前に一本の老木が立っているんだよ。この老木については、度々話題にしているんだけれど、地元の人は楠木と呼んでいるんだ。
 親父さんはタブノキと言う名前だと、これについては珍しく自信ありげに断言するんだ。千葉県内ではこの樹をイヌグスと呼んでいる所もあるそうでね。植物の名前で“イヌ。。。”と付くと、大抵偽物。或は同じ家系だけれど分家の何とか。そんな意味らしいよ。だからクスノキじゃないけれど、クスノキの親戚。そんな意味だよね。

 アタシ達がこの場所に引っ越してきた去年、このタブノキは今にも枯れてしまいそうな様子でね。それが今はどうだろう。緑濃い葉が茂り始めたよ。

 御近所さんが言うには、その昔、池の畔に立つて、太い腕を拡げるような逞しい樹形だったそうでね。だから子供達のためにツリーハウスを作ってあげたんだとか。そこから毎日利根川を眺めたり、花火大会には子供達専用の座敷を設えたそうなんだ。樹の枝下の池では、利根川で獲れたシラスウナギを育てていたそうでね。
 そう言えば、少し離れた所にウナギの卸問屋があるよね。今年はシラスが獲れなくて、経営は厳しいとか。

 ウナギの飼育を生業にしていた池の持ち主が、歳をとって稼業を止めることになってね。池には、怪しげな瓦礫や土砂が運び込まれて埋め立てられてしまったそうなんだよ。その時、池の水が御近所に溢れ出て、一騒ぎあったんだとか。
 以来、もの言わぬタブノキが衰弱を始めて、太くて逞しかった枝が枯れ、樹皮が剥がれ落ち始めたと言うんだ。だからツリーハウスも撤去されたんだとか。
 その所為でもないだろうけれど、そのタブノキの立っている土地の地主さんは、アタシ達が銚子に来る数年前、同じ市内に家を建てて移ってしまったんだって。

 今、その池の跡地にアタシんちが建っている訳なんだ。
そんな昔話、事前に知っていても、此所に家を建てた?。「どうだろうね。ケンニャン達は、利根川の景色を前にして、それだけで気に入ってしまったから。それ以外の様々な条件は、当時、全く眼中になかったらしいよ」。
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 親父さんをはじめ家族一同、そのタブノキの枯れて行く姿を見たいとは思っていないから、僅かでも葉が茂ってくれていることが嬉しくてね。何度も同じ話題を持ち出す所以なんだよ。

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