手足口病
犬には感染しないんだろうね。しばらくはコーチャンに近づかないようにしよう。
先々週あたりからコーチャン、口癖のように「痛かった!」って言うんだ。
親爺さんもケンニャン達も、コーチャンの我儘から来る一種のアピール。そう受け止めていたんだとさ。表現が過去形だからね。
2歳半の幼児の言葉のセンテンスを、大人並みに解釈しちゃいけないよ。現在形も過去形も使い分けてはいないんだろうからね。
昨夜、コーチャンが発熱している事に気付いてから、つまりは今日の親爺さんのスケジュールは全てキャンセル。育爺に専念が決定したようなものでね。しょうがないよ。両親は教師。授業に穴を開けられないもの。
先ずは診察予約を取らないとね。最近はインターネットで予約可能な医療機関が増えて、数十年前の親爺さんの育児時代のように、泣きじゃくる子供を抱いて、待合室で周囲に気兼ねしつつ一時間以上。何時呼び出されるか分からぬまま緊張を強いられる、そんな事がなくなってね。
便利になったよ。そう思いながらパソコンを操作していた親爺さん、結局何度やってもうまくゆかず、コールセンターへの電話もダメ。
パソコンのパスワード不適合。それに似た内容の躓きでね。電話番号も、パスワードも、全て指示通りにしいるつもりだけれど、全てダメ。
結局コーチャン抱えて車に飛び乗って、医院へ直接向かったよ。
ついてみたら然程混雑もしていなくて、カウンターでの受付もスムースだったとさ。
待つ事30分余り。今では顔馴染みになってしまった医者の前にコーチャン抱えて座ったとさ。
医者は口、耳を一通り。胸に聴診器を触れただけの数十秒の早技でね。
「紹介状を書きます。〇〇中央病院がいいですか?」って。「え!そんなに悪いの?」。「いや、うちの専門科じゃあないから・・・」。全くビックリさせやがる。
そんな訳で午前中、早くから駆け回った親爺さんの努力は、改めて午後、仕切り直しだとさ。
今日は南風が吹いているから未だマシかもしれないけれど、暑いなんてものじゃないよ。アタシは親爺さんのジタバタする様を、玄関の下駄箱の下からジッと覗いていたんだ。動いたら死んじまう程暑苦しいんだもの。
あまりの親爺さんのドジに見切りをつけた母親のマユちゃん、午後半休をとって帰宅したよ。「パソコンの操作が悪いんじゃないですか。アタシはスマホでインターネット予約できましたよ」。そうだとさ。
「未だ呼び出しには間がありそうだから、コーチャン、あそぼ」って、部屋に篭ってしまったとさ。
彼らが病院へ行き、家には親爺さんとアタシだけ。
親爺さん、昨夜は4時間しか眠っていないんだとさ。アタシが3時過ぎに吠えて起こしたからね。けれど眠ることもせず、そのまま書類仕事を始めたよ。明日、会議があるとかでね。その準備なんだとさ。
午後、皆が出払った家は熱帯状態でね。結局親爺さん、何も手につかず、アタシと日陰の道路に座り込んでボンヤリ空を眺めて過ごしたよ。
マユちゃん達が戻ったから聞いたんだ。「何だって?」。手足口病だとさ。今、保育園の流行病なんだってね。ウィルス感染で、感染者の大半が5歳以下の幼児だとさ。アタシは6歳だから、じゃ大丈夫なんだ。安心したよ。「犬には関係ないってば」。でも家族だからね。
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