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2018年11月19日 (月)

命運

 「あれ!母さんは?」。
夕食時間も過ぎた頃に外出先から戻った親爺さん。出かける時は母さんを連れて二人で行ったんだ。親爺さん、厳しい表情で「暫く帰ってこないよ」ってさ。
 やっぱりそうか。アタシも予想はしていたんだよ。

 昨日、何時ものように出かけた母さん。ご近所の婆ちゃん仲間に誘われて昼食会に参加だとさ。行きは親爺さんが会場まで車で送り届けてね、帰りは歩いて戻る筈なんだ。歩いても15分程の距離さ。処が予定時間を過ぎて戻った母さん、見知らぬ車の紳士に乗せられてね。途中で激しいめまいに襲われて歩けなくなってしまったというんだ。通りかかりにその様子に気づいた紳士がね、親切にも母さんを送り届けてくれたんだ。

 帰宅後に母さんの異変に親爺さんとケンニャン、即、以前経験した母さんの脳梗塞の症状を思い出して即決、つまり今日、病院に連れてゆくことにしたんだ。すでに今朝は自分で立つこともできない状態でね。

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 先ずはご近所の脳神経クリニックに連れて行ったそうだよ。
脳の断層写真を見た医師は、判断に迷っていたよ。だからか旭市にある地域中核病院への紹介状を書いてくれたんだとさ。つまりはクリニックで対応できる症状じゃないとね。
 その足で紹介状を片手に訪ねた総合病院では、救急外来、つまり救急車が運び込んでくる患者優先の窓口でね。その待合室で、救急患者が次々と運び込まれる様子を4時間近く、観察しながら名前を呼ばれるのを待っていたんだとさ。
 余談だけれど、救急車で運び込まれる人、待合室に待つ人と比べても本当に重篤なの?。そう思えたとさ。

 診察は数時間に及んでね。終わった頃には既に院内は人影もまばらだったとさ。
救急外来はインターン医師が中心なんだね。若い医者が入れ替わり立ち替わり、親爺さんに質問を浴びせ、母さんの手取り足取りで確かめていたそうでね、。時折指導役の医師だろうね。その医師を囲んで協議しながら治療方針案を組み立てていたとさ。

 母さんに下された診断は衝撃的なものでね。最悪植物状態になりかねない瀬戸際だったんだとさ。通常、治療法として認知されている薬物投与は、リスクがあってできない。つまり現状では治療の術はないという話を、親爺さん、後から駆けつけたケンニャンと共に聞かされたそうでね。腫れ物に触らぬよう、蜂の巣を突っ突かぬよう、静かに静かに周りから鎮めていきましよう。そういうことなんだとさ。

 症状に現れていたのが手足の麻痺と認知症でね。みんな関連しているそうなんだ。直接的な治療ができない結果、今後認知症は更に進行する。リハビリについても効果は疑問。少なくとも自立歩行が回復する見込みは薄い。
 これだけ言われりゃもう十分。
母さんを入院病棟に残して帰宅したという事情なんだ。親爺さん、朝からパンを口にしただけでね、空腹を感じていないんだ。ところが母さん、朝からお腹が減った、減ったと言い続けていたとさ。それしか考えることはないようにね。
 帰宅した親爺さん、その後を追うように病院の医師から質問の電話が続いてね。真剣に考えてくれている、その姿勢がありがたいとさ。 

 現実は寂しいものだとさ。今月中には母さんの転院先を探さねばならないそうでね。それもリハビリ病院の段階を通り越して、看護施設なんだとさ。親爺さん、8歳も年上の自分の身に先に起ってもおかしくない。人の命運なんだろうかとさ。
 
 

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