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2019年5月27日 (月)

奇行

 今朝は町中が濃い霧に覆われたよ。霧というより雲の中にいるようでね、鼻先に飛沫を浴びているような感触があったよ。早朝は雲に覆われていた空も、昼下がりには暑い陽射しを浴びて、だから今日は終日屋外で過ごしたんだ。親爺さんもそうだった。部屋に籠ったきりだったから、どうしているのかと心配で覗いたら、居眠りしていたよ。さすがにここ数日、深夜に目を覚ますことが続いていたからね。

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 深夜に目を覚ます事ってね、実は困っているんだ。アタシの犬仲間で白いスピッツ犬のカールがね、やってきて玄関先に居座ってしまうんだよ。アタシに好意を持ち続けてくれるのは嬉しいけれど、時と場所をわきまえて欲しいよね。いくらなんでも真夜中や夜明けにアタシんちを訪ねてくるなんてね。そんな時間だけじゃないんだ。日中に来ることもあるんだけれど、しばしば間が悪い時に現れてね。

 そんな不可思議な事が続いて、だからあんまりなんで最近のアタシは、敢えてカールには邪険に対応しているんだよ。そんな事を話すと、カールがあたかも放し飼いされ、勝手気ままにしているように聞こえるだろうね。もちろんそうじゃないよ。そうじゃないことが、この話を異様な出来事に仕立てているんだ。

 カールを我が子のように扱い、常に一緒にいる飼い主さんがね、カールが来たがるからとは言うけれど、どうやら飼い主さんの徘徊にカールが付き合っている。そんな構図が透けて見えるんだ。その飼い主さん、ケンニャン夫婦と同業だったそうでね、けれど鬱病で仕事を辞めたという前歴を聞いているよ。数年前あたりは特に奇異な行動は目立たなかったよ。けれど最近、親爺さんが出合った折は、視線が宙を舞っていたとさ。昨日はね、日中だけれどケンニャンと親爺さんが出かけようとして、玄関ドアを開けたらそこにカールが座り込んでいたんだ。1時間近く、アタシんちの玄関先に居たことをアタシは感づいてはいたよ。けれど気づかぬ振りしていたんだ。その時、親爺さんより先に玄関から道路に出たケンニャン、「親爺!、大変だ、誰かが倒れているよ」って仰天して叫んだんだ。仰天するのも無理ないよ。道路に女の人が横たわっていたからね。

 親爺さん、それがカールの飼い主の女性であることは直ぐわかってね、けれどその様子は尋常じゃないよ。親爺さん、手を伸ばして飼い主の女性の首を触ってね、「脈がある、ヨシ」ってね。「もしもし、生きてるかい」って、身体を揺すっていたよ。身じろぎもしなかったから、「救急車でも呼ぼうか?」って。

 「それ程じゃないわよ」って、ムックリ身体を起こして女性はね、応えたとさ。「じゃあ我々は出かけるからね。眠いなら、家で寝たほうがいいよ」って親爺さん、余り心配もしていなさそうにね。

 「あれは統合失調症に違いないよ」とケンニャン。「ヤバイじゃない」と、マユちゃん。夕方、ケンニャン親爺さんが帰宅して、辺りが暗くなった頃、再び玄関先に姿をみせてね、道路の縁石に腰を下ろして、今度は犬の鳴き真似をはじめたよ。

 

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