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2019年7月26日 (金)

生後一ヶ月目

 「ココが遠出してますよ」。近所の魚屋さんのお客が知らせたんだとさ。自分でも上手く表現できないんだけれど、遠くへ行きたい欲求に逆らえなくて、今日も又、炎暑を押して家から独りで歩き出してね。親爺さんが玄関を開けて掃除中にね。親爺さんが追っかけてきて、素直にお縄を頂戴したんだけれど、そのまま帰る気にはならなくて、全身の力を振り絞って更に家から離れようとリードを引っ張ったよ。リードを握った親爺さん、それでもアタシを無理に引き戻そうとはせずに、一緒に歩いてくれたんだ。ビッコ引き引きね。

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 先日、勝手口の段差を踏み外して倒れてね、足の指を痛めてしまったんだ。加えてご近所さんが催す町内のラジオ体操会に参加してね、それで脚の筋肉痛に見舞われたとさ。痛みにビッコ引いて歩く親爺さんを引き回すのも気が退けて、それにこの暑さだからね。アタシもバテて、結局一時間程の謀反に終わったんだ。その後。親爺さんの信頼を失ったんだね。庭に閉じ込められてしまったよ。

 処で今日は先月生まれた赤ん坊が一ヶ月経ってね。順調な生育なんだけれど家族皆、ヘトヘトなんだよ。親爺さんも手助けで一日数度は赤ん坊を腕に抱いて、寝かし付けるんだ。頻繁に授乳やオムツ交換に、寝て欲しいけれど眠ってくれずでね。今日は身体に湿疹が広がっているんで、皮膚科にマユちゃん母子を送って行ったよ。

 「今日の見立ては、赤ん坊はこんなものだよ。兄貴のコーチャンに昨年処方した塗り薬がまだ残っている筈だから、それを塗ってもいいよ。私もヤブ医者だから、もしこの後、もっと酷くなるようなら又おいで。今日はお代はいらないよ」。連れて行った皮膚科でそう言われてね、「そうですか」って戻ってきたよ。赤ん坊にとって初めての医者体験だったよ。この医者、好きだな。

 午後、母さんの入所している介護施設に様子見に行く予定でいた親爺さんに、「赤ちゃん顔見せに一緒にゆきましょうか?」とマユちゃんから申し出があってね。先月、同室の入所者から母さんのイビキが煩い。廊下で寝ろってね。そんなクレームを受けていたんだ。 親爺さん、施設に部屋替えを頼んでいたんだけれど、そうしてくれたそうでね。そのお礼と本人の様子見のためなんだけれど、多分、愚痴られるだろうな。そう思っていたから、マユちゃんの申し出には親爺さん、ありがたかったとさ。

 結果は予想以上、赤ん坊効果は凄かったとさ。母さん、赤ん坊を腕に抱いて涙を流して喜んでいたとさ。その部屋にいた他の老人たちも笑顔になったそうでね。先ずはよかった。「家族がいるから、他には何もいらないよ」って。「何か必要な物は・・?」。そう親爺さんが母さんに質問した答えがね。その言葉を聞いた親爺さん、我が耳を疑ったそうだよ。病に倒れる前はね、「独りで暮らしたい。こんな家から出たい」とまで言っていた母さんだからね。そんな言葉に親爺さん、当時は怒りを抑えることに精一杯でね、認知症の所為だと受け止めていたけれど、徒労感を募らせていたそうだよ。皮肉な事だけれど母さんが入院して以来、親爺さん、苦労はしているけれど気持ちの平静を保っているそうなんだ。

 

 

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