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2019年12月11日 (水)

苦痛の深度

 昨夜の出来事さ。脳の発達障害による自閉症スペクトラム。その症状の発現は人様々。ただ共通することもあって、今回は集団での統一行動ということ。クリスマスが近くなって、保育園ではクリスマス祝会に園児達が披露するパフォーマンスの練習が続けられていたんだ。コーチャン、そのような行動に同調できなくて。毎回、舞台の袖で立ちん坊しているんだ。今回は、そのパフォーマンスで身につけるキラキラ飾りの衣装をね、どうしても着たがらず、だから「お家で練習させてください」と、園から親爺さん、衣装を渡されたのさ。

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 親爺さん、彼と帰宅後、それを母親のマユちゃんに手渡して、だからマユちゃん、即座に着せることを試みたんだね。親爺さん、その時はアタシの相手で家の外にいて様子を見ていなかった。アタシ達が部屋に戻った時はコーチャン、大泣き状態で、傍でマユちゃんが匙を投げていたんだ。その状態がしばらく続いて、何とかおやつを与えて落ち着いた処でね、マユちゃんは弟のアキちゃん連れて買い物に外出してね、残った親爺さん、彼と静かにお茶していたよ。それでもコーチャン、時折泣きじゃくってはいたけれど、突然お風呂に駆け込んだんだ。「お風呂へ入るのかい?」。で彼は独り入浴していたよ。けれど時折号泣してね。

 しばらくして風呂からでてパジャマ姿になった彼、誰にいうともなく「コーチャン、着るよ」。それを何度も何度も呟いてね。「本当に良いの?」。親爺さん、彼に確かめていたよ。コーチャン、まるで硬い表情で一大決心したようにね。で、親爺さんが手を貸してそのキラキラ衣装を身に着けたんだ。けれど余りに辛そうな様子に親爺さん、もう十分と衣装を脱がしてね、「コーチャン、着られたじゃない。できたじゃない」。その直後、彼は玄関に向かい靴を足に引っ掛けると泣き喚きながら家の外へ飛び出したんだ。

 追って捕まえようとする親爺さんをすり抜けてね、街に向かってダッシュしたんだ。どうにか彼を抱きとめてなだめようとしたけれど大暴れさ。それでも何とか抑えて「ドライブしよう」ってね。親爺さん、コーチャン載せて出かけたよ。駅前のイルミネーションを30分ばかり見せた後、落ち着いた様子に家の近くまで戻ってきたらコーチャン、またまた泣き喚き出してね。家で車のドアを開けたら「NO-NO-NO-」。親爺さん。自分の耳を疑ったとさ。「大丈夫、大丈夫だよ」。普段、言語不明瞭な彼が「イヤだ、止めて、止めて、やるから止めて」。全く狂乱状態さ。直前に帰宅していたマユちゃんがそう叫んでいるコーチャンの声に驚いて飛び出したよ。

 結局親爺さんと同じく車にコーチャン載せて、再び出かけて行ったんだ。後で聞いた話では、やはり家に近づくと泣きわめいたとさ。その後、急を聞いて戻ったケンニャンが、再度マユちゃんを伴って出かけてね、家で親爺さんと赤ん坊のアキちゃんとアタシが待っていたら、小一時間程して戻って来たコーチャンの泣声が聞こえたよ。ケンニャンが彼を抱きかかえて家に連れ込んだけれど、床で転げ回わり、母親の体を押しやったり抱きついたりのコーチャンさ。

 結局、昨夜は父親が寄り添って同じ寝床で眠ったそうでね。今朝はコーチャン、何事もなかった様子で支援施設の送迎バスに嬉々として乗り込んだとさ。この出来事に対する家族の認識はね、彼が嫌がっている、その深度に対する認識が不足していた。そういう反省と、彼にとってのサンクチュアリーである家庭に、保育園での指導するイベント課題を持ち込み、彼に強いるべきではなかった。まして母親が教師という事実。その時、親爺さんはチラリ見した母子の様子に、マユちゃんが教師の顔で彼と対峙していたと感じているそうでね。つまり彼が母親の胸に飛び込みたい時、母親が保育園の保育士と同じ顔になっていたのでは、彼は突き放された気分だったかもしれないよ。可哀想にコーチャン、味方もなく途方にくれたんだろうとね。

 それを感じ取ってか母親であるマユちゃん、コーチャンを抱きしめて「ごめん、ごめん」と何度も繰り返していたよ。驚いた出来事だったけれど、自閉症スペクトラム対処の難しさを、家族皆が再認識した昨夜さ。一説に自閉症児は、こんな出来事の記憶を成人後も持ち続ける傾向があるそうでね。だから一見落着と観るのは早計なんだとさ。

 

 

 

 

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