ガイド
朝は南からの風が吹いてね。その所為かとても湿気っぽいんだ。
梅雨だから当然なんだけれど、それだけじゃないよ。太平洋から潮っ気のある空気が押し寄せてくるからね。
親父さんも言っていたけれど、今日の刑部岬からの眺めは、湿気で水平線が薄らぼんやり、だってさ。
今日は親父さん、旭市へ出かけてね、駅前の観光ボランティアガイドの活動拠点を訪ねたんだ。ここの人達はね、既存の組織との関わりもなく、まさにボランティアとして、街を訪れる人に街のガイドを始めたばかりでね。まだ実績はないんだ。実は親父さんも、刑部岬展望館でね、施設を訪れる学校児童生徒を対象に、ガイドサービスを始めようとしているんだ。 環境学習プログラムって言うそうだよ。
とは言え,現状では親父さん自身がガイドを務める他なくてね。覚悟はしているけれど、出来るだけ地域の人達の助力も得たいのが本音だそうでね。だから、活動の連携をお願いしているそうなんだ。
ガイドサービスと言っても、その目的はいろいろあってね。今、組織として存在するのは,観光協会などがあるよ。その観光協会が,駅前などで案内所を開いている例は多いけれど、基本は情報提供なんだって。
一方、ボランティアガイドの人達が考えるのはアテンド。つまり寄り添うことなんだね。訪問者と一緒に街を歩いて、市民交流することなんだって。これは簡単じゃないよ。負担も大きいしね。
こういった発想は,”もてなす”。ホスピタリティーとも言われるけれど、そんな心が無いと出来ないよ。
先日,親父さんはこんな会話の場に居合わせたんだって。
片方は、その土地に永住する余所者。もう一方はその土地に生まれ育った土地っ子。
先ほどのガイドサービスは余所者が言い出したことさ。それに対して、土地っ子は総じて冷ややかでね。「何にも知らないくせに」とね。
「そんなことを言っても、アンタ達は何かしたか?。我々の乗っている船が沈みかけているのは解るべ〜」とは、余所者。
そんな応酬が繰り広げられてね。「まあまあ、そこを力を合わせて」と、親父さん。
こんな場面は、あらゆる場所で幾度となく目にしているそうでね。
土地っ子は、聞かれたら答えるけれど、自ら,何かを語るセンスに乏しいのは事実でね。
この街の場合「又来てください」。土地っ子はその一言を言わないんだよ。決して”もう来るな”と言うことじゃないのにね。一方で、観光客の誘致でなんとかしなきゃと、腕組みしているんだ。面白いね。
ともかく親父さん、この場面じゃあ、余所者側なんだよ。
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